口腔ケアから始まる健康生活

静岡新聞社企画の元日本歯科医師会会長大久保光男先生と県立がんセンター総長の山口建先生の対談を見て参考になる事を紹介するね。

臨床心理学の大家である元文化庁長官の河合隼雄先生が『医学の手を万事尽くした後は、少々非科学的な要素を入れても、患者さんや家族の思いをかなえてほしい。そして患者さんがご自身の物語を完結しあの世に旅立つお手伝いをして下さい。』と山口建先生に話されたそうです。
40年以上患者さんの診察に当たり、また最後の見取りも数多く行なって来た事も有り心に残るお話だったので『医学は科学、医療は物語』と言う言葉にまとめて多くの医療スタッフに伝えて来たと言う。
がん患者さんに抗がん剤などを投与すると口内が荒れて食事が困難になる事が有るが口腔ケアをすればかなり予防できる事が分かって来た。そこで大久保満男先生が静岡がんセンターの開院時に歯科医師を配置するように県知事に陳情した。こうしてがんセンターの努力により、がん治療における医科歯科連携が静岡から全国に広まった。山口建先生も『全人的医療』が進められている現在、口腔ケアとがん治療は一体化が必要だと言う。
実は口腔内の病気と全身の病気との関係に早くから着目したのはサンスターで私等の取り組みよりはるか前、1986年から『マウス&ボディー』と言う概念を提案していた。これは口腔内の病変は全身に影響を与えると言う意味で歯周病と糖尿病の関連や心臓疾患や低体重児出産との関連などの研究が始まっている。逆に全身の病気が虫歯や歯周病や口内炎を悪化させる事も知られている。
日本では2007年から超高齢社会に突入した。ここで超高齢社会での最大の問題点は平均寿命と健康寿命の10年の大きな差に有る。つまり我々は人生最後のおよそ10年間を何らかの障害を抱え、介護を必要とする日々を送り、本人、家族、社会に負担の重い時期を過ごさなければならないと大久保先生は言う。研究を続ける内に歯が多く残っている人ほど元気で社会的な繋がりも多い事が分かって来た。つまり歯を残す事は人生に大きな意味が有る。自分の口で食べて生きる人生であれば、心身ともに幸せである。その支援こそが歯科医師と歯科医療の課題だと見いだせたと言う。
終末期の患者さんの訴えは『痛みを治して欲しい』と言う声が多いが、次に聞かれるのは『自分の口で食べられるようにして欲しい』と山口先生は言う。大久保先生によるとある緩和ケアの医師が余命わずかな患者さんから『自分はあと数日で死ぬと思うが、入れ歯の調子が悪いので治して欲しい』と頼まれたそうです。その医師は驚いたものの希望をかなえるために近くの歯科医師に頼んで入れ歯の調整を行った。翌日その患者さんは『もうこれで思い残す事は無い』と満足な表情を浮かべ1週間ほどで亡くなられたそうだ。その話で感じたのは命とは『今を生きる』と言う事、『数日後には亡くなるから、今の生活は無意味』では無い。今を生きる自分の為に入れ歯を治して欲しいと言う要望は当然の事で『自らの口で食べる』行為は、『今』をより良く生きる自分の心の有り方にも深く関与していると言っていた。

この大久保満男先生と山口建先生の内容に大変感銘した。
私が居宅に往診に行き寝たきりで生きる気力を無くした患者さんが居た。初診から『俺は死にたい。生きていてもしょうがない。』と口癖の様に言っていたが、口は閉じたままで決して開こうとしない。ご家族からは口腔からの出血が気になり診て欲しいと言われていた。しかし往診の回を重ねるごとに話し掛けに応じる様に成っていった。そして元気な頃の趣味がクラシック音楽の鑑賞だと話してくれる様にまでなった。『心の窓』が開いた瞬間だ!!!そしたら『お口の中を診せて下さい・・・さん💛』と言ったらとても素直に協力的になり、最近では往診に行くとラジカセでクラシック音楽を流して、とても明るくなった。毎回の口腔ケアと虫歯の治療も進み、生きる気力を見つけたのか『死にたい』とは決して言わなくなった。口腔ケアはどんな状態の人にも必要な事で口から食べる楽しみの為に少しずつ元気を取り戻していくのがとても嬉しく思う☆彡☆彡☆彡

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